つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2004) 3: TJB200403TK.

特集:卒業・退官

4年間を振り返って

小林 泰平 (筑波大学 生物学類 4年)

 筑波大学生物学類に入学するまでは、僕は一人暮らしどころか一人旅すらしたことがなく、希望よりも不安の方が大きかった気がします。でも、入学した時に心に決めていたことが一つあって、それは「大学では、自分に出来ることのもう少し上の事に挑戦してみよう」ということでした。

 1年生の時は一人暮らしと学生生活に慣れること自体が自分にとっては挑戦でした。2年になると入っていたテニスサークルの代替わりが夏にあり、キャプテンをする事になりました。中学、高校でも人の上に立ったことなどない自分が、30人以上の人達をまとめていくのは簡単なことではありませんでした。自信なんてありませんでしたから、今思うとハッタリでやっていた部分も多々ありました。でも、自分たちの代が企画運営した試合やイベントの後に、先輩や後輩から「楽しかった」と一言いってもらえると、次もがんばろうと素直に思いました。それに一年間同じ目標に向かって一緒に頑張った仲間は、自分にとって最高の宝物になりました。

 3年生の夏からは生物学類とマンチェスター大学との交換留学制度に応募して、約10ヶ月イギリスのマンチェスターで生活してきました。あの10ヶ月を思い返してみると、「よく帰ってこれたなぁ」と我ながら感心します。最初は、文字通り右も左も分からず、道を聞くだけでも話しかけるのを躊躇したりして、それに誰かが教えてくれてもその英語を聞き取れませんでした。英語は出来ませんでしたが、友達はすぐに増えました。僕がいつも一緒に遊んでいたのは、留学の最初の頃に大学の留学生センターが主催するオリエンテーションコースで出会った多国籍なメンバーで、ドイツ・レバノン・スペイン・香港・モロッコなど世界中から集まっていました。たいていはPUB(イギリス版の居酒屋)でマンチェスター・ユナイテッドの試合をビール片手に大画面で観戦したり、誰かの部屋でパーティーをしたりと楽しんでいました。研究室は昆虫を使って進化生態学をやっている部屋で、僕はテントウムシとアブラムシを使って、捕食者と被食者の関係について調べることにしました。僕のイメージでは、イギリス人はマイペースに楽しんで研究をしている人が多い気がします。みんな夕方の5時にはいなくなり、平日でも平気で飲みに行ったりします。そして、次の日には普通に朝早くから研究しています。日本に帰ってきてから考えると、イギリスで僕の周りにいた人は研究や仕事などの時間とプライベートの時間の使い分けがうまく、生活に上手にメリハリをつけている人が多かったように思います。

 大学の4年間を通して、自分がどう成長したかをうまく言葉で表現することは出来ませんが、自分の世界がとても広がったことは確かです。様々な事を経験し、それまでは会ったことのない色々な人々とふれあう中で、自分にはない考え方や生き方を知ったり、今まで気付かなかった自分を知ることもできました。これからも常に何かにぶつかって行けたらいいなと思います。

Communicated by Fumiaki Maruo, Received March 26, 2004.

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