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ギボシムシから新口動物の進化を探る

シモダギボシムシ
Balanoglossus simodensis

 ギボシムシとは海底の砂の中に棲んでいるミミズのような生き物(図左上)で,半索動物門,腸鰓綱に属する動物の総称です.半索動物は,脊索動物や棘皮動物,珍渦虫とともに 新口動物群を構成しています.分子系統解析の結果から棘皮動物と近縁 であることが分かっています.幼生の形態も棘皮動物と似ており(図下),両者の近縁性を支持しています.一方でギボシムシは,変態して成体になると,左右相称の体制や鰓裂を持つなど, 棘皮動物よりも脊索動物に近い体制をしています.つまり,ギボシムシは変態というイベントを介して,棘皮動物に似た体制から,脊索動物に似た体制になるのです. また,ギボシムシの神経系は,原始的な散在神経系であり,刺胞動物の次に原始的な神経系ともいわれています. このような点から,ギボシムシは現生の生物の中で新口動物の共通祖先に最も近い生物であると考えられています.
 以上のようにギボシムシは 新口動物の進化を考える上で非常に重要な生物ですが,非常にマイナーな生物で,採集することさえ難しいので,世界的にも研究例が非常に 乏しいのが現状です.しかし,我々は日本で研究するのに非常に適した種を発見し,この種を用いて様々な実験系を確立してきました. このようにギボシムシという非常にユニークな生物を用いて,新口動物の進化史を明らかにしていきたいと考えています.