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藻類の分類系

藻類の系統については多くのことが分かってきました。分類系は明らかになった系統関係をできるだけ反映するべきものです。ラムール (1819年)ハーヴィー (1836年)らの葉緑体の色調に基づいた分類系から,さらに細胞形態を加えたパッシャー(1910-1930)の分類系を経て,藻類の分類系はより信頼できるものになってきました。今世紀後半の電子顕微鏡の発達と分子系統の発展によるところ大です。

現在では,藻類が起源の異なる生物群の集合であることをみとめつつも,歴史的に水中の酸素発生型光合成生物を扱う「藻学:phycology」の立場から分類が行われています。原核生物である藍藻や原核緑藻は,もちろん細菌のなかまです。しかし,歴史的にこれらの研究は藻類学者 (phycologists)が行ってきた経緯があり,「藻類」として扱われています。藻類の分類系は,系統関係を別途理解しながら,みる必要があります。

藻類は一般におよそ10の門,20の綱として認識されています。

門 (Division)

綱 (Class)
藍色植物門
Cyanophyta
藍藻綱 Cyanophyceae
原核緑色植物門
Prochlorophyta
原核緑色藻綱 Prochlorophyceae
灰色植物門
Glaucophyta
灰色藻綱 Glaucophyceae
紅色植物門
Rhodophyta
紅藻綱 Rhodophyceae
緑色植物門
Chlorophyta
プラシノ藻綱 Prasinophyceae
アオサ藻綱 Ulvophyceae
緑藻綱 Chlorophyceae
トレボキシア藻綱 Trebouxiophyceae
シャジクモ藻綱 Charophyceae
クリプト植物門
Cryptophyta
クリプト藻綱Cryptophyceae
クロララクニオン植物門
Chlorarachniophyta
クロララクニオン藻綱
Chlorarachniophyceae
ユーグレナ植物門
Euglenophyta
ユーグレナ藻綱 Euglenophyceae
渦鞭毛植物門
Dinophyta
渦鞭毛藻綱 Dinophyceae

黄色植物門
Chromophyta

不等毛植物門
Heterokontophytaという呼び名もある

黄金色藻綱 Chrysophyceae
ラフィド藻綱 Raphidophyceae
真眼点藻綱 Eustigmatophyceae
黄緑色藻綱 Xanthophyceae (Tribophyceae)
褐藻綱 Phaeophyceae (Fucophyceae)
珪藻綱 Bacillariophyceae
ディクティオカ藻綱 Dictyochophyceae
ペラゴ藻綱 Pelagophyceae
ハプト植物門
Haptophyta
ハプト藻綱 Haptophyceae

この分類系は,特に綱の階級ではまだまだ不完全な部分が残されています。たとえば,緑色植物のプラシノ藻綱やアオサ藻綱,黄色植物の黄金色藻綱はあきらかに複数の起源のことなる系統群を含んでおり,今後整理が必要です。綱の数はさらに増加して行かざるを得ないでしょう。実際そのような手続きが行われています。

藻類は分類形質の項で扱ったさまざまな形質によって特徴づけられています。門の階級で簡単にまためると図のようになります。この図では,葉緑体がどのようにして獲得されたと考えられているかも加えました。


藻類が上のように分類されるからといって,それをまとまりのある分類群としてとらえることは間違いです。藻類は,あくまでも「酸素発生型光合成を行う生物」の集まりで,しかも酸素発生型光合成は光合成生物の細胞共生によっておそらく10個ほどの異なる系統で獲得されたと考えられるからです。細胞共生(endosymbiosis)による藻類の多様化