茎 (stem) は葉を側生する器官であり、光合成を担う葉を支えている。また光合成によって葉が作り出した同化産物を植物体全体に行き渡らせ、また葉が光合成を行うのに必要な水や無機養分を根から葉に受け渡す働きを担っている。 |
節と節間茎は葉をつける器官であるが、茎において葉がついている部分を節 (node) という。節と節の間が節間 (internode) である。トクサ科やイネ科 (タケなど) では節が隆起していることで節・節間を明瞭に認識することができる。またふつう葉がついている場所を手がかりにすれば節・節間を間接的に知ることができる。ただしタンポポ (キク科) の短縮茎のように、節間が極めて短縮して容易には認識できないこともある。 内部構造的には、節の部分は葉への維管束 (葉跡) が分枝するところであり、複雑な形態を示す。節間の部分は下の節間の維管束が延長しているだけであり、比較的単純である。またトクサ科やタデ属 (タデ科)、オダマキ属 (キンポウゲ科)、セリ科、イネ科などでは節間の中心部 (髄) が消失して中空になっており、この孔は髄腔 (pith cavity, medullary cavity) とよばれる。ハルジオン (キク科) は中空でヒメジョオンは中実のように、髄腔の有無は重要な分類形質になる。またイネ科における髄腔をもった茎は特に稈 (clum) というが、髄腔をもたないカヤツリグサ科の茎も稈とよばれることがある。 |
幹と枝主軸から分枝した軸性の構造 (茎) を枝 (branch) という。また木本の場合、主軸のことを幹 (trunk) という。 木本において何回も分枝している場合、幹から分枝した第一次の枝を大枝 (limb, bough)、末端の数次の枝を小枝 (branchlet) といい、その中間にあるものを狭義の枝とよぶことがある。ただしこれらの区分は厳密なものではない。また分枝回数が少ない場合は、特に区分せずに全て枝とよぶ。 ふつう末端にある枝は、現在伸張しているか、もしくは (休眠期の場合) 最も最近まで伸張していた枝である。このような枝を今年枝または当年枝 (hornotinous branch, current year's branch) とよぶ。それに対して休眠期を経て2年目になった枝は前年枝 (last year's branch, previous year's branch) であり、以降順に3年枝、4年枝、5年枝.....とよぶ。 今年枝のうち、前年枝の頂芽から伸びたものは頂枝 (terminal branch, terminal twig) といい、前年枝の側芽から伸びたものを側枝 (lateraal branch) とよぶ。頂枝は将来の主軸になる枝であり、特に幹の頂端にある頂枝は一年生幹 (annual trunk) という。 ふつうの枝のように節間が伸びて葉が散生してつくような枝を長枝 (long branch, long shoot) という。それに対して節間が成長せず、葉が短い茎に束生する枝のことを短枝 (short branch, short shoot, branchyblast, spur) という。短枝はイチョウ (イチョウ科) やマツ属 (マツ科)、アブラチャン (クスノキ科)、ブナ属 (ブナ科)、ガマズミ属 (スイカズラ科) など広く見られる。サボテン科の刺は葉の変化したもの (葉針) だが、この葉針がまとまってつく刺座 (areole) は短枝である。ホオノキ (モクレン科) やクヌギ (ブナ科)、ソメイヨシノ (バラ科)、フジ (マメ科) などに見られるように、短枝ほどではないがふつうの枝にくらべて節間が短い枝を短枝化した小枝 (dwarfed branchlet) という。 主軸の側芽が休眠期を経た後に、主軸に遅れて側枝を伸ばす場合、この側枝を先発枝 (proleptic branch, prolectic shoot) という。それに対して側芽が休眠することなく主軸と同時に側枝を延ばす場合、この側枝を同時枝 (sylleptic branch, sylleptic shoot) という。先発枝をもつものは温帯より高緯度地域に多く、同時枝をもつものは低緯度地域に多い。 |
さまざまな茎地表面より上にある茎を総称して地上茎 (aerial stem, epigeal stem, terrestrial stem) という。
巻きつき茎やよじのぼり茎のように単独では直立できずに基物を支えに上に伸びる茎をつる (liane) と総称する。 直立する木本において、機械的支持力が弱いため枝が水平よりも下方に伸びることがあり、しだれ (weeping) とよばれる。しだれはシダレヤナギ (ヤナギ科) やシダレザクラ (バラ科) などで有名である。イワシャジン (キキョウ科) など草本でも茎が垂れ下がることがあるが、これはしだれとはいわない。 |
花をつける茎花や花序はシュートであり、茎についている。花をつける茎とつけない茎は異なる性質を示すことがある。
草本において、地表から伸びて先端に花や花序をつけ、普通葉をつけない茎のことを花茎 (scape) という。花茎はユキノシタ属 (ユキノシタ科) やオランダイチゴ属 (バラ科)、スミレ属 (スミレ科)、カタバミ属 (カタバミ科)、イチヤクソウ属 (ツツジ科)、オオバコ属 (オオバコ科)、キスゲ属 (キスゲ科)、クモキリソウ属 (ラン科) などに見られる。アズマギク (キク科) のように茎の葉が著しく小さいために花茎のように見えるものは花茎状 (scapoid) という。 |
特殊な茎茎はときに大きく変形して特殊な役割を担っていることがある。
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