卒業研究に関する情報 2007年度)
Graduation Study (Japanese Only)


キーワード: 神経科学,神経生理学,脳,感覚,視覚,嗅覚,シグナル伝達,イオン・チャネル,パッチクランプ法,電気生理学,ノックイン(ノックアウト)・アニマル,免疫組織化学,カルシウム(セル)・イメージング,イモリ
  当研究室では,脳を含む神経細胞の生理学的な機能を解明する目的で,主にパッチクランプ法などの電気生理学的手法を用いた研究を行っており,これまで,視細胞,嗅細胞,味細胞のシグナル伝達のメカニズムに関する研究を行ってきました。これらの研究は,ヒトを含む動物の脳・神経系の普遍的な機能を解明することを目的としています。
    生理学研究のおもしろさは,生きた細胞で実際に起こっていることを,リアルタイムで観察することにあります。分子生物学や生化学などと比べて,実験にはある程度のテクニックを習得する必要がありますが,それを乗り越えれば他の人にはまねのできない研究ができます。

  以下に,研究の概要を,実験材料,実験手法,卒研テーマ,など項目別に解説します。詳しいことは研究室訪問でお話しますので,ぜひ訪ねてきてください。また,中谷研究室のホームページには,文献リスト,実験室の写真,シグナル伝達の模式図などいろいろな情報がありますので,参照してください。
    
    なお,当研究室は櫻井啓輔助教の研究室と連携していますので,動物生理学に興味のある方は櫻井研究室も訪ねてみてください。

実験材料


イモリ: この動物は飼育が簡単で,1年中動物業者から入手することが可能です。これまで嗅覚の研究に広く利用されており,基礎的なデータも豊富で,嗅覚の研究に適しています。千葉親文准教授を中心にイモリ研究ネットワークの構築を目指しています。

カエル: ウシガエルは嗅細胞および味細胞の実験に用いています。哺乳動物と比べて細胞が大きく,視細胞の実験にも広く使われています。この動物は学生実習でもよく使われるので,おなじみの実験動物です。

マウス:
実験動物としてポピュラーなマウスですが,遺伝子操作にもよく使われます。京都大学や東京大学の研究室と共同で,ノックイン(ノックアウト)マウスを利用した実験を始めました。



実験手法

電気生理学的方法: ガラス管電極や金属電極を生きた神経細胞内に刺入し,細胞の電気現象(電流・電位)を記録する方法です。微小な電流や電位はアンプ(amplifier)で増幅し,オシロスコープなどの計測機器で観察します。記録したデータはコンピューターで解析します。パッチクランプ法も電気生理学的方法の一種です。私の研究室ではこの方法を主要な研究手段としています。

蛍光色素を用いた細胞内イメージング:
細胞内にCa2+など各種の蛍光プローブを導入し,その濃度変化を2次元的に観察する方法です。この方法では,細胞内で起こっていることをリアルタイムで画像として追って行くことができます。技術的にはパッチクランプ法などの電気生理学的方法より簡単です。


分子生物学的方法:
必要に応じPCR法などを用いて特定の遺伝子の発現を調べています。

免疫組織化学的方法: 神経組織に,細胞内に存在する各種タンパク質や酵素などの抗体を投与すると,それらの抗体が作用する部分が発色します。その発色部位を調べることによって,シグナルの発生に関与するタンパク質などの物質の局在を明らかにすることができます。その結果を電気生理の結果と比較して細胞内で起こっている現象を解析します。

形態学的方法: レーザー走査共焦点顕微鏡などの顕微鏡を用いて,神経組織の形態を調べる方法です。逆行性染色などで神経の走行を調べます。必要に応じて電子顕微鏡を用いることもあります。

行動学的方法: 感覚系での情報の受容から中枢での情報処理を調べるのに,刺激(入力)に対する動物の行動(出力)を観察するのも有効な手段です。



卒業研究のテーマ(仮) 詳細は研究室訪問時に説明します。
  • イモリ嗅細胞におけるシグナル伝達の分子メカニズムの電気生理学的解析
  • イモリ嗅細胞における,抑制性匂い応答メカニズムの電気生理学的解析
  • イモリ嗅細胞における,匂いの相互作用の電気生理学的解析
  • イモリ嗅細胞における,生息環境の変化による匂い受容タンパク質発現のしくみ
  • ウシガエル味細胞におけるシグナル伝達の分子メカニズムの電気生理学的解析
  • マウス味細胞におけるトランスデューシンの役割
  • ノックアウト(ノックイン)マウスを用いた視細胞の光シグナル伝達の電気生理学的解析 (休止中)

共同研究
(これまでに共同研究を行ったり,現在も共同研究を行っている国内外の研究室です。)
  • Johns Hopkins University School of Medicine, Department of Neruroscience, Dr. King-Wai Yau: 視細胞における光シグナル伝達

  • Medical University of South Carolina, Department of Ophthalmology, Dr. Yiannis Koutalos: 視細胞および嗅細胞におけるシグナル伝達

  • 京都大学大学院理学研究科(生物物理), 七田芳則博士, 他: ノックイン・マウスを用いた光シグナル伝達機構

  • 東京大学大学院理学研究科, 深田吉孝博士,他: ノックアウトマウスを用いた味細胞の研究

  • 杏林大学医学部生理学教室, 赤川公男博士