菌学者は遊走細胞を形成する鞭毛菌類を栄養様式(従属,吸収栄養)に基づいて菌類として認識してきました。このような菌類は鞭毛菌亜門としてまとめられ,3綱(ツボカビ綱 Chytridiomycetes, サカゲツボカビ綱 Hyphocytridiomycetes, 卵菌綱 Oomycetes)が認識されてきました。この分類は現在でも広く採用されています。
ツボカビ綱 Chytridiomycetes | サカゲツボカビ綱 Hyphocytridiomycetes | 卵菌綱 Oomycetes |
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遊走子は後端に1本の鞭毛をもつ | 遊走子は先端に羽型の鞭毛を1本もつ | 遊走子は側方に2本の鞭毛を持ち,前鞭毛は羽型,後鞭毛はむち型である |
これらのうち,サカゲツボカビ類と卵菌類の「菌類」は性質の異なるの2本の鞭毛( ヘテロコント heterokont)をもつ遊走細胞を生じることから,菌類とは系統的に異なり,藻類の褐藻や黄金色藻などの藻類に近縁であることが古くから指摘されていました。いわゆる「藻菌類」としての認識です。
一方,ツボカビ類は接合菌,子嚢菌,担子菌とともに真の菌類の仲間と認識されています。
ビコソエカ類は2本の鞭毛をもつ無色の鞭毛虫類です。黄金色藻のなかで二次的に葉緑体を失った仲間(たとえばAnthophysa, Spumellaなど)とともに,無色の黄金色藻と考えられていましたが,葉緑体を獲得する前のストラメノパイルと考えられるようになってきました。