さまざまな葉
various leaves

葉はに側生する器官であり、ふつう光合成を担っている。多くの維管束植物では、葉は扁平で光を十分受け取れる形をしている。このような葉を普通葉(foliage leaf)という。一方で葉には変異が多く、さまざまな形態・機能をもつ場合がある。

茎生葉と根生葉

茎生葉(cauline leaf)
伸張した地上茎につく葉。茎葉ともいう。
根生葉(radical leaf)
節間が極端に短縮した地上茎短縮茎)の基部につき、あたかも根から生じているように見える葉。ハルジオン(キク科)のように茎生葉と根生葉を併せ持つこともあるし、スミレ属(スミレ科)やイチヤクソウ属(ツツジ科)、オオバコ属(オオバコ科)、タンポポ属(キク科)、シュンラン属(ラン科)などのように根生葉だけをもつこともある。根生葉の中で、冬も枯れないで放射状に密に広がって越冬するものをロゼット葉(rosette leaf)とよび、その集合をロゼット(rosette)とよぶ。ロゼットはマツヨイグサ属(アカバナ科)やノゲシ属(キク科)などに見られる。

水生植物の葉

水生植物はその特殊な生育環境に応じてさまざまな特殊な葉をつける。同一種が場所の違いに応じて複数のタイプの葉をつけることもある。

沈水葉(submerged leaf)
全て水中にある葉のこと。一般に軟弱で機械的組織の発達が弱く、気孔を欠く。マツモ(マツモ科)、タヌキモ(タヌキモ科)、クロモ(トチカガミ科)、アマモ(アマモ科)などに見られる。
浮水葉(floating leaf)
水面に浮かんでいる葉のこと。一般的な葉とは異なり、気孔は葉の表にある。デンジソウ(ウラボシ綱)、ヒツジグサ、ジュンサイ(スイレン科)、ヒシ(ヒシ科)、アサザ(ミツガシワ科)、ヒルムシロ(ヒルムシロ科)などに見られる。
抽水葉(挺水葉)(emergent leaf)
水面から突き出ている葉のこと。コウホネ(スイレン科)、ハス(ハス科)、オモダカ(オモダカ科)、ガマ(ガマ科)などに見られる。
浮き袋(air bladder)
浮遊植物では葉柄が膨れて多胞質の浮き袋になることがある。ホテイアオイ(ミズアオイ科)などに見られる。

特殊な形をした普通葉

普通葉は扁平で葉身が広がった形をしていることが多いが、種類によっては普通葉が特殊な形をしていることがある。

針状葉(針形葉、針葉)(needle leaf)
硬く細長い針状の葉。中肋は不明瞭である。マツ(マツ科)やスギ(ヒノキ科)など球果類に多く、針葉樹の名のもとになっているが、針葉樹というグループを示す場合には意味が広く、後述の線形葉や鱗状葉をもつ球果類も針葉樹である。被子植物ではハリエニシダやスギバアカシア(マメ科)に見られる。
線状葉(線形葉、線葉)(linear leaf)
細長く扁平な葉。中肋は明瞭。モミ(マツ科)やイヌマキ(マキ科)、コウヤマキ(コウヤマキ科)などに見られる。
鱗状葉(鱗形葉、鱗葉)(scale-like leaf)
小さな鱗片状の葉。十字対生して茎を包んでいる。ヒノキやサワラ、コノテガシワなどヒノキ科に多く見られる。
管状葉(tubular leaf)
筒状になった葉。ネギ(ネギ科)やイグサ(イグサ科)などに見られる。
重複葉(duplicate leaf)(エリカ葉 ericoid leaf)
ツガザクラやガンコウランなど高山に生育するツツジ科植物では、葉が小さく針状で単一脈系をもつことがある。このような葉は横断面では密毛をもった葉の縁が裏側に巻き込んだ形をしており、その結果できる空洞部分だけに気孔がある。このような葉身は重複葉身(duplicate blade)とよばれ、蒸散を最小限に抑える乾燥に適した形態であると考えられている。

異形葉性

一つの個体の普通葉のなかに、形態の異なる複数の型が認められるとき、これを異形葉性(heterophylly)という。ただし、どの程度以上の差異を異形葉性とするか基準があるわけではない。

クワ(クワ科)やカクレミノ(ウコギ科)、ヒイラギ(モクセイ科)では分裂しない葉から分裂葉までの変異が見られ、異形葉性の好例である。またツタ(ブドウ科)の単葉三出掌状複葉や、イブキ(ヒノキ科)の鱗状葉針状葉のように2型が明瞭に区別できる場合、特に二型性(dimorphism)という。

1つのシュートにつく葉の間で異形葉性が見られる場合、これを特に不等葉性(anisophylly)という。例えばヒノキ(ヒノキ科)ではシュートに背腹性があり、上面・下面・側面の葉がそれぞれ異なる形を示す。またクサギ(クマツヅラ科)では大きさの異なる葉が組になって十字対生する。

苞葉

葉腋にまたは花序をつける特殊化した葉のことを苞葉(bract leaf)または(bract)という。花を抱く葉でも普通葉と変わらない場合には苞葉とはよばない。また多くのアブラナ科のようにそのような葉を欠くグループもある。苞葉は、そのつく位置によって、総苞、小総苞、小苞に分けることができる。

花序の基部にある苞葉のことを総苞片(involucral scale)といい、集合体として総苞(involucre)とよばれる。キク科やマツムシソウ科の頭花(頭状花序)における総苞片は明瞭であり、その配列や特徴は重要な分類形質になっている。また特殊な総苞片としては以下のようなものがある。

殻斗(cupule, cupula)
ブナ科では多数の総苞片がその軸と共に合着し、殻斗とよばれる椀状の構造を形成する。いわゆるドングリの"はかま"がこれにあたる。クヌギなどでは合着が不完全だが、シラカシなどでは完全に癒合している。
仏炎苞(spathe)
サトイモ科では肉穂花序を包む1枚の総苞片がよく目立ち、特に仏炎苞とよばれる。

ドクダミ(ドクダミ科)やヤマボウシ属(ミズキ科)の花序の基部にある4枚の大きな葉や、トウダイグサ属(トウダイグサ科)の花序(杯状花序)の杯状体などもよくめだつ構造で総苞片とよばれることが多い。ただしこれらの葉には腋芽がつくので、厳密には総苞片ではないとする意見もある。

サトイモ科の仏炎苞やドクダミ(ドクダミ科)、ポインセチア(トウダイグサ科)、ブーゲンビレア(オシロイバナ科)、ヤマボウシ属(ミズキ科)の総苞は大きく派手でよくめだち、かわりに通常の花弁を欠如するか退化的である。これらの総苞は機能的には花弁のかわりを果たしているものと思われる。

多くのセリ科のように複合花序をつくるものでは、大花序の苞のことを総苞、小花序の苞を小総苞(involucel)とよぶ。小総苞の構成単位が小総苞片(involucel segment)である、イネ科の小穂は小花序であり、その基部にある1対の苞穎(glume)は小総苞片と見なすことができる。

個々の花の基部につく苞葉のことを小苞(bracteole, bractlet)という。双子葉植物では2個、単子葉植物では1個のことが多いが、その有無や数には変異も多い。スゲ属(カヤツリグサ科)の果胞(perigynium)は特殊化した小苞と考えることができる。

単子葉植物において、花序に腋生する有鞘葉苞鞘(苞鞘片 bract sheath)という。

球果類において、胚珠をつけた種鱗(seed scale)は苞鱗(bract scale)の腋についている。苞鱗も苞葉の一種と見ることができる。

葉の変形

葉はときに大きく変形して特殊な機能を担っていることがある。

芽鱗(bud scale)
休眠芽は特殊化した葉で包まれていることが多い(有鱗芽)。この葉が小形で多数存在するときは芽鱗という。比較的大きく少数の場合は苞葉というが、両者の区分ははっきりしているわけではない。
果鱗(cone scale)
球果類の球果を構成する特殊化した葉を果鱗とよび、苞鱗(bract scale)と種鱗(seed scale)がさまざまな程度に癒合してできている。苞鱗は被子植物における苞葉(小苞)にあたり(上記参照)、種鱗は胚珠をつけるので花葉(心皮)に相当する。
花葉(floral leaf)
を構成する葉のことで、萼片、花弁、雄しべ、心皮(雌しべの構成単位)がある。
葉針(leaf spine, leaf needle, leaf thorn)
葉の全体や小葉托葉などが変化して鋭い突起になったもの。サボテン科やメギ科などに見られる。ニセアカシア(マメ科)のように托葉起源のものを特に托葉針(stipular spone)という。
葉巻きひげ(leaf tendril)
葉の全体や小葉托葉など葉の一部が変化して巻きひげになったもの。バイモ(ユリ科)(葉全体に起源)、カラスノエンドウ(マメ科)(頂小葉起源)、シオデ(ユリ科)(托葉起源)、カザグルマ(キンポウゲ科)(葉柄起源)などに見られる。
捕虫葉(insectivorous leaf)
食虫植物において昆虫などを捕らえるために特化した葉のこと。その機構や形態は多様である。モウセンゴケ科やムシトリスミレ(タヌキモ科)では葉の表面に腺毛があって虫を捕らえる。またタヌキモ(タヌキモ科)やウツボカズラ科、サラセニア科では捕虫葉が嚢状になり、特に捕虫嚢(insectivorous sac、嚢状葉 pitcher)とよばれる。捕らえられた動物は窒素源として利用される。
貯蔵葉(storage leaf)
葉の柔細胞が多量の貯蔵物質を蓄え多肉質になったもの。鱗状で鱗茎 を構成する葉は特に鱗茎葉(bulb leaf)という。クロユリやユリ属(ユリ科)、ネギ属(ネギ科)などに見られる。

鱗片葉

光合成を行わず、普通葉よりも著しく小形になった葉を鱗片葉(scale leaf)という。鱗片葉のなかには前記の芽鱗苞葉花葉果鱗鱗茎葉などが含まれる。ほかにもシダ類の葉柄につく褐色で針状の葉、アカマツ(マツ科)の2葉の組の根元を包む小さく膜質の葉、タケ類(イネ科)の若い地上シュート(いわゆるタケノコ)を包む黒褐色の葉(タケノコの皮)などがある。

低出葉と高出葉

普通葉以外の特殊な葉は、シュートにつく位置によって低出葉と高出葉にわけられる。

低出葉(cataphyll)
シュートの下部につく特殊化した葉を低出葉という。芽鱗やキジムシロ属(バラ科)の托葉だけからなる葉、単子葉類の鞘葉、タマネギ(ネギ科)の鱗茎葉などがある。側枝の最下につく低出葉のことをとくに前出葉または前葉(prophyll)といい、ミカン属(ミカン科)の葉腋にある葉刺やイネ科の第一苞穎などがある。
高出葉(hypsophyll)
シュートの上部につく特殊化した葉(花葉以外)を高出葉という。代表的なものとして苞葉(総苞片や小苞)がこれにあたる。ほかにネコノメソウ属(ユキノシタ科)の花序を支える苞葉以外の特殊化した葉やトウダイグサ属(トウダイグサ科)の杯状花序の基部にある対生する葉、ウスユキソウ属(キク科)の頭花群の下にある毛深い葉などがある。

葉の食害防止機構

葉は植物にとって光合成を担う重要な器官であるが、食植性の動物にとっても重要な餌である。そこで植物は動物による食害を防ぐためにさまざまな方法をとっている。

最も一般的な防御法は、動物にとって有害な物質を貯め込むことである。タンニンやアルカロイド、蓚酸カルシウムなどその物質はさまざまである。そのような物質を含む構造として腺点(pellucid dot)や腺毛(glandular hair)が発達することもある。また動物にとっては、いったんその物質に対する耐性を獲得すれば、他の食植性動物が食べない未開拓の餌を得ることができるようになる。このような関係も植物と動物との共進化の一つの側面であろう。

食害防止の構造として最も単純なものは葉縁に存在する鋸歯であろう。大形の食植性動物にとってはこのような構造も立派な食害防止機構になりうる。実際に食植性動物にねらわれやすい下部の葉では鋸歯が発達しているが、上部の葉では鋸歯が未発達であるような例もある。また微小なレベルでは葉に生えるさまざまな毛状突起が食害防止に働いている例もあると思われる。毛状突起の中には粘液物質を分泌して食植性の小型動物(ハダニなど)をからめ取ってしまうものもあるらしい。

複雑なものとしては花外蜜腺(extrafloral nectary)がある。被子植物において蜜腺はふつう花の中にあって昆虫など送粉者の誘因に役立っていると考えられるが、花以外の場所に蜜腺が存在することがあり、花外蜜腺とよばれる。サクラ(バラ科)やアカシア(マメ科)など花外蜜腺は葉柄や葉身など葉の特定の場所に存在することが多い。花外蜜腺の機能としては、余剰なショ糖の処理のほかに、アリなどを引き寄せて他の動物による葉の食害を防御するのに役立っていると考えられている。

花外蜜腺の他にもコショウ科やマメ科の一部にみられる真珠体(pearl grand, pearl body)や、オオバギやアカメガシワ(トウダイグサ科)にみられる食物体(food body)など身を守ってもらうためにアリに餌を与えると考えられる構造は多い。また特殊なものとしてクスノキ(クスノキ科)などの葉に見られるドマティア(domatia)とよばれる葉脈の腋などにできた小室がある。ドマティアにはダニが棲んでいることが多く、捕食性のダニによって食植性のダニから防御してもらっているのだと考えられている。ただし実際にそのような有効性があるかどうかについては、はっきりしていないようである。

葉上生

葉はに側生する器官であり、成長は有限であるため、ふつう他の器官をつけることはない。しかしときに葉上に花序不定芽などをつけることがあり、葉上生(epiphylly)とよばれる。

ハナイカダ(ミズキ科)では普通葉と花序の原基が発生初期から分離せずに成長するため葉の上に花序またはがつく形になる。シナノキ属(シナノキ科)では苞葉花序に同様のことが起こり、苞葉の上に花序がつく。またコモチシダ(ウラボシ綱)やセイロンベンケイソウ(ベンケイソウ科)では普通葉の葉縁に不定芽が生じる(葉上不定芽)。

ナギイカダ(スズラン科)でも葉の上に花がついているように見えるが、この"葉"は扁平な茎(葉状茎)であり、花は葉上生ではない。